「リズムを学ぶ」ことはそんなに重要なのでしょうか?
この記事では、英語の発音における「リズム」について解説し、「リズム」について学ぶメリットについても紹介します。
英語の発音における「リズム」とは
英語の発音における「リズム」というのは、 「音の強弱・速さ」 のことです。
英語には、強くゆっくり発音するべき部分 と、弱く素早く発音するべき部分 があります。
例えば、以下の例文を見てください。
Don’t use a smartphone in the bathroom .(お風呂でスマホを使うのはやめなさい)
この文は、
Don’t use a smartphone in the bathroom.
太字で示した部分は強くゆっくり読む一方、「a」「in」「the」は弱く素早く読まないと不自然になります。
日本人は、
ドント ユーズ ザ スマートフォン イン ザ バスルーム
と、「ア」や「イン」・「ザ」も均等に強くゆっくり読んでしまう傾向があるため、カタコトに聞こえたり、場合によっては意味が通じなかったりするのです。
英語の「リズム」のルール
内容語と機能語
英単語は、語彙的な意味を持つ「内容語」と、文法的な意味を持つ「機能語」の2種類に分けることができます。
具体的には、名詞・動詞・形容詞・副詞などが「内容語」に分類されます。一方で、be動詞・前置詞・代名詞・接続詞・冠詞などは「機能語」に分類される単語です。
具体的な例文を見ていきましょう。
John went to the store yesterday.
この文の場合、「John(名詞)」「went(動詞)」「store(名詞)「yesterday(副詞)」が内容語に当たるため、強くゆっくり発音します。
「to(前置詞)」「the(冠詞)」は機能語に当たるため、弱く素早く発音するのが自然で伝わりやすくなります。
強形と弱形
be動詞や代名詞は機能語なので、基本的には弱く素早く読む単語です。
しかし、これらの単語は文中の位置によって「強形」になる場合と「弱形」になる場合があります。
「強形」の場合、内容語と同じようにはっきり読み、弱形の場合は弱く曖昧な発音になります。
例えば、以下の例文を見てください。
He is in the office.
文頭にある代名詞は強形になるため、この時の「He」は内容語と同じようにはっきり発音されます。
一方で、
I don’t like him.
文中や文末の代名詞は弱形になるため、この時の「him」は「[him](ヒム)」ではなく、「h」が省略されて「[əm] ェム」のようなあいまいな発音になります。
代名詞の場合も、「of」などは「オヴ」ではなく、[ə(v)](ァ)のように発音されます。
この「弱形」が、日本人が英語を聞き取れなかったり、うまく発音できなかったりする大きな原因となっているのです。
逆に言えば、「弱形」のルールを正しく把握することで、英語をリズムよく流ちょうに発音することができるようになるといえます。
英語のリズムを学ぶメリット
ここまで英語の「リズム」のルールについて紹介しましたが、「リズムってそんなに重要なの?」「別に勉強しなくてもいいんじゃない?」と思っている人も多いかもしれません。
しかし、英語のリズムを学ぶと、様々なメリットがあるのです。
「通じる発音」が身につく
「通じる発音」というと、「L」と「R」の区別など、英語の個々の音の学習に目が行きがちですよね。
しかし、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の廣谷定男教授によると、むしろ英語は、発音が多少間違っていても、リズムさえ正しければ通じてしまうことも多いんだとか。
英語は内容語をはっきり読むので、内容語さえ追っていけば意味が伝わるようになっています。しかし、機能語まではっきり発音されると、英文の意味が追いにくくなるのです。
「個々の音の発音は合っているはずなのに、なぜか自分の発音がネイティブに通じない……」と悩んでいる人は、正しい英語のリズムの習得を目指した方が良いかもしれません。
リスニング力がアップする
英語のリズムを覚えると、実はリスニング力アップにもつながります。
英文音声を聞きながら「速すぎて聞き取れない」と感じている人は、「速さについていけない」というよりも、一生懸命機能語や弱形を追いかけていて、意味がとりづらいのかもしれません。
英語のリスニングは、基本的には内容語と強形を追っていければ意味が把握できます。
英語のリズムを把握することで、ナチュラルスピードの英文にも苦労することなくついていくことができるようになるのです。
英語のリズムおすすめトレーニング法
アプリを使う
英語のリズムを練習する方法としては、アプリを利用するという方法があります。
お手本となるネイティブの音声を聞いて、それをスマホに向かって真似して発音すると、合格・不合格で判定されたり、点数で判定されたりします。
そして、どの発音を改善すればいいかフィードバックももらえます。
スマホアプリを使ったトレーニングなら、場所と時間を選ばず好きな時に練習できます。
ただし、自分だけで練習していると、本当にネイティブに通用する発音なのか、どこを改善すればいいのか判断ができないというのが難点です。
動画サイトを利用する
YouTubeチャンネルなどの動画配信サービスにも、発音を練習できる動画がたくさんアップされています。
アプリと違って、お手本となるネイティブの音声に加えて口の形も確認できるので、より正確に真似をすることができるのがメリットです。
ただ、動画を利用する場合も、1人で練習していると、自分の発音が合っているかどうか、改善すべき点はどこかなど判断しづらいのがデメリットといえます。
プロの手を借りる
英語の発音をトレーニングする方法としては、プロの助けを借りるという手段もあります。
例えば英語コーチングサービスなら、学習者それぞれの苦手分野に対応したレッスンをオーダーメイドしてくれる場合が多く、またコーチから適切なフィードバックがもらえます。
自分の発音を客観的に判断してくれる相手がいて、改善点も正しく把握できるので、効果的に発音を習得することができます。
特に英語のリズムは日本人にとって習得が難しい分野なので、英語コーチに頼んで的確なアドバイスをもらうのがおすすめです。
おわりに
日本人が英語のリズムを習得しにくい理由の一つとして、「日本語と英語のリズムがかけ離れているから」ということが挙げられます。
英語のリズムは「強勢拍リズム」といい、欧米の言語で広く見られるものです。一方、日本語のリズムは「モーラ拍リズム」といい、6000以上とも言われている言語の中でただ1つ、日本語にしかないものなのです。
日本人が英語を苦手としているのは、ある意味仕方のないことなのかもしれませんが、「日本人は英語のリズムを習得できない」ということにはなりません。
英語のリズムを習得するには、ただ英語のリズムを「理解」すればいいのです。
この記事を読んで、「英語のリズムには日本語にない別のルールが存在すること」と、「それがどんなルールか」を知るだけで、日本人の英語に対する「苦手意識」はガラッと変わる可能性があります。
ぜひ英語のリズムとそのルールに目を向けてみてください。