英語の発音をマスターするには、英語の音それぞれを学び、音声変化を理解する必要があります。
そして、英語の発音学習の総仕上げとなるのがプロソディー(韻律)です。これらすべての要素が揃って、はじめて英語話者にとって「聞き取りやすい」英語の発音をすることができます。
この記事では、特に分かりにくい「プロソディー」について重点的に解説します。
発音の基礎知識
このセクションでは、英語の発音をマスターするために習得すべき要素について解説します。
英語の正しい音を学ぶ
英語の発音をマスターするには、まず英語の正しい音を学ぶ必要があります。日本語の母音は5個、子音は13個あるといわれている一方で、英語の母音は15個、子音は24個あり、日本語にはない音や音の区別があります。
英語独特の音をきちんと学ぶことで、カタカナ英語から脱却できます。
英語の正しい音を学ぶ方法としては、まず「フォニックス」が挙げられます。
フォニックスは、文字とそれに対応する音を学ぶ音声学習法で、もともと英語圏の子どもたちに読み書きを教えるために開発されたものです。
大人がフォニックスを使って英語音声を学ぶ時は、「A」の発音= [æ]・[ɑ]・[ʌ] というように、発音記号を使って学習するのが一般的です。
また、英語の音を学ぶもう一つの方法として、「Color Vowel Chart」を使った学習法があります。
Color Vowel Chartを使うと、[æ] の音は「black cat」、[ʌ] の音は「a cup of mastard」のような、自然なフレーズの中で覚えることができるので、発音記号を覚える必要がありません。
日本では少しなじみの薄い学習法ですが、英語教授法として多くの国で採用されている方法です。
自分に合った方法で、英語の正しい音を身につけていくと良いでしょう。
音声変化を学ぶ
音声変化とは、言葉が自然に話されるときに、もともとの発音が変化することです。
連結(リンキング)・同化(アシミレーション)・ラ行化(フラップT)・脱落(リダクション)・弱形などがあります。
例えば、以下の例文を参照してください。
“Can I have a cup of tea?”(お茶を一杯いただけますか?)
この文では、多くの単語が子音で終わっているため、後に続く母音とくっつく「連結(リンキング)」が起きています。
発音初心者は以下のように発音しがちです。
キャン アイ ハヴ ア カップ オブ ティー?
しかし実際は、リンキングにより、以下のような発音になります。
キャナイ ハヴァ カッポヴ ティー?
このように、英語では文字面とは異なる発音がされる場合が多くあります。
音素の次は、英語の音声変化を理解することで、英語の発音習得へと大きく近づくことになります。
プロソディーを学ぶ
英語の発音習得において、総仕上げとなるのがプロソディーです。
プロソディーは「韻律」とも呼ばれ、英文の意味やニュアンスを左右する、音楽でいうメロディーのようなものです。
日本語には日本語の、英語には英語のプロソディーが存在するため、英語のプロソディーで話さないと、正しい発音をしていても不自然に聞こえたり、正しい内容が伝わらないこともあります。
プロソディーの3要素
プロソディーの概念は専門家によって異なりますが、この記事ではリズム・ストレス・イントネーションから構成されるものとして解説します。
リズム
英語では、強く長く読む単語と、弱く省略した形で読む単語が存在します。
一般的には、内容語(名詞、動詞など)を強く読み、機能語(前置詞、代名詞など)を弱く読みます。
これによって、英語の文章全体にリズムが生まれます。
以下の例文を見てください。
Her mother went to the school in the morning.
この文では、「mother」「went」「school」「morning」をはっきり読み、その他の単語は弱く読みます。
Her MOTHER WENT to the SCHOOL in the MORNING.
そして、はっきり読む単語を中心にリズムのかたまりが生まれます。
Her mother| went| to the school| in the morning.
これらのリズムのかたまりをそれぞれ同じくらいの長さで読むと、リズムの良い英文になります。
しかし、日本人はすべての単語を同じくらいの長さで読んでしまうので、英語話者は違和感を感じることが多いようです。
アプリを使う
ストレスは「アクセント」とも呼ばれ、日本語では「強勢」といいます。
英単語の音は、音節に分けて数えられます。例えば、「prosody」という単語は、「pro・sody」という2音節で構成されています。
そして「PRO・sody」というように、一番目の音節に「ストレス」が置かれます。
ストレスは、英語の意味を左右する重要な要素です。
2音節の単語には、最初(前)の音節を強く読むと名詞、最後(後)の音節を強く読むと動詞の意味になる単語が多数あります。
学校英語で「名前動後(めいぜんどうご)」と教わった記憶のある人もいるでしょう。
REcord(記録)
reCORD(記録する)
OBject(物体)
obJECT(反対する)
このように、ストレスの位置で意味が変わる単語は他にもたくさんあるので、誤解を生まないためにも、それぞれの単語のストレスの位置を正しく発音するようにしましょう。
イントネーション
イントネーションは「抑揚」とも言い、文全体のニュアンスを整える働きをしています。
具体的な例文とともに見ていきましょう。
You eat dinner. ↓
この文を下がり調子で読むと、「あなたは夕飯を食べるんだね」という意味になります。
しかし、
You eat dinner? ↑
と上がり調子で読むと、疑問文のニュアンスを帯びるため、「夕飯食べるの?」と尋ねる意味合いになります。
また、「You drink the juice.」という例文の、イントネーションによる意味の変化を見ていきましょう。
「you」を強く読むと、以下のようなニュアンスになります。
YOU drink the juice? ↑ あなたがそのジュースを飲むの!?
(私の分だって言ったじゃない!)
「drink」を強く読むと、以下のようなニュアンスになります。
You DRINK the juice? ↑ あなたそんなジュース飲むの!?
(まずそうで私はとても飲めないよ)
最後に、「juice」を強く読むと、以下のようなニュアンスになります。
You drink the JUICE? ↑ あなたジュース飲むの!?
(みんなはお酒を飲んでるのに!)
このように、イントネーション次第で、英文のニュアンスは全く変わってしまいます。
自分の意図を正しく伝えるには、正しいイントネーションを身につける必要があるのです。
プロソディーを学ぶにはどうしたらいい?
プロソディーに限らず、英語の発音を独学で習得するのは大変です。
方法としては、アプリや動画サイトを利用してネイティブの発音をひたすら真似るということが考えられます。
でも、英語の発音の仕組みを言語化して教えてくれる先生がいたら、もっと効果的に英語の発音を習得できますよね。
忙しくて英語を学習する時間がなかなか取れないという社会人の方には、英語コーチングの利用がおすすめです。
英語コーチなら、自身がきちんと英語を発音できますし、日本人コーチは英語の発音の仕組みを理屈で教えてくれるので、回り道をすることなく、最短距離で英語の発音を習得できます。
おわりに
英語の正しい音素や音声変化を習得すると、自分の言いたい内容が伝わりやすくなります。
そして正しいプロソディーを習得すると、言いたい内容がさらに伝わりやすくなるだけでなく、自分の気持ちまで伝えることができます。
英語を学んでいる人は、翻訳ソフトを使わずに自分の気持ちを伝えたいという志を持つ人だと思います。
自分の気持ちを伝えたいと思うなら、音素や音声変化だけでなく、プロソディーもしっかり学びましょう。
英語で自分の気持ちを正しく伝えられるだけでなく、相手の気持ちも正しく受け取ることができるはずです。