グローバル化が進むビジネスの現場では、「英語が話せる」こと以上に、「英語で論理的に考え、伝える」力が求められています。
どれだけ正しい意見を持っていても、その意見を、論理的に、明確に伝えられなければ、説得力は生まれません。
そこでこの記事では、「MECE(ミーシー)」や「5W1H」などの用語で知られる、ロジカルシンキングのフレームワークを、英語でどのように活用できるかを分かりやすく解説します。
英語ミーティングで効果的に意見を発信したい方、「伝わる」プレゼンを提供したい方は、ぜひ参考にしてください。
ロジカルシンキングとは
ロジカルシンキング(論理的思考)とは、情報や事実をもとに筋道を立てて考え、「矛盾のない結論」を導き出す考え方です。
感情や直感に頼るのではなく、「なぜそうなるのか?」「その根拠は何か?」と考えながら、「誰がみても納得できる」結論を導き出します。
日本語でもロジカルシンキングを展開することがありますが、日本語では、前提や背景を丁寧に説明してから結論を導き出す、「ボトムアップ型」が一般的です。
例えば、以下のように論理を展開します。
まずAという事実があり、さらにBという状況もある。したがって、Cということが考えられる。
それに対して、英語では、まず結論を述べ、そのあとに理由や補足を加える「トップダウン型」が一般的です。
私たちはCという行動を起こす必要がある。AとBという事実がこの結論の根拠となっている。
ロジカルシンキングは、「考える力」であると同時に、「伝える力」にも直結します。
特に英語では、文法や語彙以上に、「なにを話すか」がコミュニケーションの質を左右するため、論理的に考えるスキルは非常に重要です。
次の章では、英語で活用できるロジカルシンキングのフレームワークを4項目に分けて紹介します。
英語で活用できるロジカルシンキングのフレームワーク
ロジカルシンキングを実践するには、思考を整理するための「型(フレームワーク)」を活用するのが効果的です。
特に英語で論理を展開する際は、話の構造を明確にすることが求められるため、ロジカルシンキングのフレームワークは、「伝わる英語」を話す強力な武器になります。
ここでは、英語でもそのまま活用できる代表的な4つのフレームワークを紹介します。
- MECE(ミーシー)
- 5W1H
- So What? / Why So?
- ロジックツリーとピラミッド構造
それぞれどういう考え方なのか、詳しくみていきましょう。
1. MECE(ミーシー)
MECEは「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive(互いに排他的で、全体として網羅的)」の頭文字に由来します。
簡単にいうと、「漏れもダブりもない」情報整理のことです。
例えば、顧客タイプを分類する際には、以下のように整理することができます。
当社の顧客は、個人、小規模事業者、大企業の3つに明確に分類できます。
このように、「重複なく」「網羅的に」情報を整理すると、英語でも効果的に意見を発信することができます。
2. 5W1H
5W1Hとは、「Who, What, When, Where, Why, How」の6つの視点から物事をとらえる考え方です。多角的に状況を把握し、議論や情報を整理するのに適しています。
例えば、次のような問いを組み立てることで、思考を整理することができるでしょう。
なぜこのような事態になったのか?
私たちはどうやってそれを解決できるか?
英語でディスカッションを行う際にも、このようなシンプルな疑問文を軸にすることで、自分の発言を論理的に展開しやすくなります。
3. So What? / Why So?
英語で説得力のある発言をするためには、「Why so?(なぜそう言うのか)」「So what?(だから何なのか)」というロジカルシンキングの視点も非常に重要になってきます。
この2つの「問い」は、話し手が自分の主張や意見を深掘りし、相手に納得感を与えるための「内なる問いかけ」です。
つまり、単に「何を言うか」だけでなく、「なぜそう言うのか」「それが相手にとって何を意味するのか」を意識することで、より筋の通った、説得力ある話し方ができるようになります。
例えば、以下のように主張したとします。
9月に新しいサービスを開始すべきです。
このような主張だけで終わってしまうと、聞き手にとっては何のメリットも感じられないため、納得しづらくなってしまいます。
そこで、次のように続けます。
(Why so?)
顧客の需要は通常、第3四半期にピークを迎えるため、マーケティングの準備に時間を要するためです。
(So what?)
この機会を逃すと、競合他社に市場シェアを奪われる可能性があります。
このように、「Why so?(なぜそう言うのか)」で根拠を明確にし、「So what?(だから何なのか)」でその意味やインパクトを伝えることで、単なる主張ではなく、相手に行動を促すメッセージを伝えることができます。
4. ロジックツリーとピラミッド構造
ロジカルシンキングでは、複雑な情報を「構造化」して考えることで、相手に分かりやすくなり、伝える力も向上します。
特に英語では、聞き手にストレスなく論点を理解してもらうために、話の「骨組み」を意識することが重要です。
代表的な「構造化」の技法として、「ロジックツリー」と「ピラミッド構造」が挙げられます。
ロジックツリー
ロジックツリーは、問題やテーマを階層的に分解するフレームワークです。原因分析やアイデア出し、要素の整理など、あらゆる思考プロセスで使えます。
たとえば、「売上が落ちている理由」を分析する際には、次のように考えます:
売上減少の原因
├── 顧客数の減少
├── 購買単価の低下
└── リピート率の低下
このようにツリー構造にすると、情報の抜け漏れを防ぎながら、論点を整理できます。英語では、こうした構造を前提に次のように話すことができます。
売り上げ減少の主な理由は3つあります。顧客数の減少、1回あたりの平均購入額の低下、およびリピート率の低下です。
ピラミッド構造
一方で、ピラミッド構造は「結論→理由→具体例」の順で話を組み立てる方法です。
英語ではこの「トップダウン型」が基本とされ、ビジネス文書やプレゼン、会話でも広く使われています。
例えば、以下の例を見てください。
結論:
デジタルマーケティングへの投資を強化すべきです。
理由:
最近のキャンペーンで最も高いROIを実現しています。
競合他社はすでにデジタルマーケティングへの投資を増やしています。
顧客行動がオンラインチャネルへと移行しています。
このように、まず結論を提示し、その後に理由やデータを用いて土台のように支えることで、論理的で説得力のある伝え方ができます。
ロジックツリーは「考えを広げる」道具、ピラミッド構造は「伝える」ための道具とも言えます。
英語でのコミュニケーションでも、この2つを意識することで、話の流れに一貫性が生まれ、聞き手にとって理解しやすいメッセージになります。
ロジカルシンキングの活用例
ロジカルシンキングのフレームワークを理解したら、次はそれを英語で使いこなす練習が必要です。
英語のビジネスシーンでは、要点を素早く整理し、それを明確に伝える力が求められます。
この章では、英語でのプレゼンテーションやディスカッションにおいて、論理的に話すための実践法を紹介します。
プレゼンテーションでの活用例
英語でプレゼンテーションを行うには、事前にどんなことを話すか、ある程度準備をしておく必要があります。
ただ、英語での議論に不慣れだと、何から話していいか分からないですし、話をまとめるのも難しいですよね。
そういった場合、ロジカルシンキングのフレームワークを使って、話の「型」を作っておくのが最適の対策です。
以下の例文を参考にしてください。
英語のプレゼンでは、まず結論から話し始めます。
本日は、デジタルサービスにおけるサブスクリプション型料金体系の採用を提案したく思います。
そして、ピラミッド構造のフレームワークに従って、根拠となる3つの理由を挙げます。
この時、MECEのフレームワークも応用して、漏れがなくダブりもない発言内容にすると効果的です。
この背景には、3つの主要な理由があります。
まず第一に、顧客維持です。 サブスクリプションは、顧客との長期的な関係の維持に役立ちます。
第2に、収益の安定性です。 サブスクリプション制では、毎月予測可能で継続的な収入を得ることができます。
第3に、マーケットのトレンドがあります。 サブスクリプションは、私たちの業界で一般的になりつつあります。
このように、ピラミッド構造とMECEのフレームワークで理由を述べてから、さらに「
Why So?」のフレームワークで主張を補強するとよいでしょう。
以下の2つの例文を参考にしてください。
当社の競合企業の75%が既に同様のモデルを導入しており、サブスクリプションを採用する企業では、顧客のQOLが20~30%増加していると報告されています。
さらに、当社の調査によると、既存ユーザーの68%が、一括払いよりもサブスクリプションを望んでいることが示されています。
そして、計画の全体像を説明する時は、「5W1H」のフレームワークが役立ちます。実際に「Who」「What」などの言葉を見出し語として使うと、聞きやすいプレゼンになります。
では、5W1Hの視点で、今回のプランをご説明します。
まず、「誰に向けた施策か?」 私たちの主要なユーザー層、特に中規模企業を主なターゲットとしています。これまでにも当社のツールを活用してくれている層です。
次に、「何を提供するのか?」 月額または年額のサブスクリプションプランを導入し、ツールへのフルアクセスを提供します。
「いつ始めるか?」 今年の第4四半期に試験導入の開始を提案します。ユーザーの反応を見て調整するためです。
「どこで展開するか?」 北米と東南アジアを中心に展開します。これらの地域ではすでにユーザーの関心が高く、手応えを感じています。
「なぜ実施するのか?」 ユーザーの定着率を高めると同時に、安定した収益を構築するためです。
最後に、「どのように実行するのか?」 段階的な料金プランを導入し、上位プランにはより多くの価値ある機能を追加する予定です。
プレゼンの最後には、「So What?」のフレームワークを使って、自分の主張の意義を強調し、聞き手に次のアクションを促しましょう。
この方針転換により、収益の予測がしやすくなり、ユーザーのニーズにも合致し、効率的なスケールアップが可能になります。 そのため、今後3か月間で試験モデルを企画・検証するための小規模なプロジェクトチームを立ち上げることを提案します。
このように、ロジカルシンキングを使った話し方には、ある程度決まった「型」があります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、自分の中でもロジカルシンキングを進めながら話をすることで、結果として聞き手を動かすプレゼンを提供することができます。
会議・ディスカッションでの活用例
英語で会議やディスカッションを行う際にも、ロジカルシンキングのフレームワークが役立ちます。
例えば、質問者の立場なら、「So What? / Why So?」のフレームワークを活用して、相手の主張を深掘りすることもできるでしょう。
以下の例文を参考にしてください。
サブスクリプションがリピート率向上に役立つというお話でした。なぜそうお考えですか?その根拠となるデータはありますか?
収益が予測可能になったとして、具体的には、ビジネス判断にどのように役立つのでしょうか?
ロジカル・シンキングを用いることによって、明確で的を射た質問を投げかけることができ、建設的な議論を進めることができます。
また、「5W1H」を使った問いは、議論を深める上でとても有効です。
このモデルの具体的なターゲットは誰ですか? その層が本当にサブスクを好むという検証はできていますか?
投資回収(ROI)が見込めるのはいつ頃ですか? 損益分岐までにどれくらい時間がかかるかも検討されていますか?
How do we plan to handle users who prefer one-time purchases?
一括購入を好むユーザーには、どのように対応する予定ですか?
一括購入を好むユーザーには、どのように対応する予定ですか?
さらに、「MECE」のフレームワークも、英語でディスカッションを行う上で役に立ちます。
以下の例文では、メリット一辺倒ではなく、「漏れなく」、リスクも含めた整理を促しています。
サブスクリプションの利点について説明されましたが、リスクやデメリットはありませんか? たとえば、導入コストやユーザーの反発などです。
また、以下の例文は、ターゲットユーザーを「重複なく分類して」分析する視点からの質問です。
顧客層を明確なグループに分けて、どのセグメントがサブスクに最も適しているか分析できますか?
このように、ロジカルシンキングのフレームワークは、プレゼンのディスカッションやミーティングなどでも、建設的な議論を進めるのに役立つのです。
まとめ
この記事では、ロジカルシンキングの代表的な4つのフレームワークと、その実践法を紹介しました。
- MECE(ミーシー)
- 5W1H
- So What? / Why So?
- ロジックツリーとピラミッド構造
英語での発言力を高めるには、文法や語彙の知識だけでなく、「考えをどう明確化するか」がカギになります。
ロジカルシンキングのフレームワークを意識することで、自分の主張はよりクリアになり、説得力を持って伝わります。
ぜひ、プレゼンやミーティングの場でロジカルシンキングを実践し、グローバルなビジネスシーンを渡り歩く武器として役立ててください。
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ホール 奈穂子
株式会社ギャビーアカデミー代表取締役
元九州大学職員。TOEIC 990、IELTS 7.5(Speaking 8.0)を誇る、英語学習独学のスペシャリスト。27歳から英語を学び直し、自らの人生で英語習得がもたらす可能性を証明。米国赴任、留学プログラムや海外大学との共同学位取得プログラムの設計・運営に携わった経験から、日本人の英語学習における課題を深く理解し、効果的な学習方法を追求。その集大成として、東京大学と共同で、脳科学に基づいた独自の英語スピーキング習得メソッドを開発。現在カナダ・バンクーバーに在住。世界を舞台に活躍する日本人ビジネスパーソンの育成に情熱を燃やし、日本とバンクーバーを往復しながら精力的に活動中。趣味はカナダを舞台にしたサケ釣り。