「納期を延長してほしい」「支払いを待ってほしい」「もう少し検討する時間がほしい」といった場面では、「猶予」という言葉が使われますよね。
それでは、英語で「猶予」はなんといえばよいのでしょうか。
インターネットで調べると、「grace period」「extension」「deferment」など、さまざまな表現がヒットしますよね。
実は、日本語の「猶予」は、幅広い意味をカバーするやや抽象的な言葉です。
英訳の正しいニュアンスをおさえずに使ってしまうと、言いたいことが伝わらなかったり、思わぬ誤解が生まれてしまったりするかもしれません。
この記事では、ビジネスシーンで実際に使える「猶予」の英語表現を3つ厳選し、それぞれの意味合いと使い分けを例文とともに解説します。
「猶予」関連の難しいシーンを英語で切り抜けたい方は、ぜひ参考にしてください。
「猶予」について英語で考える

「猶予」を英語で表現する際は、「何に対して」「どのような」時間的な余裕かによって、使う表現が変わります。
そのため、日本語でいう「猶予」は、次のように分解して考える必要があります。
- 期限後も支払い・手続きなどを受けつける(grace period)
- 期限そのものを延ばす(extend)
- 追加の少しの時間(extra time/ more time / additional time)
ビジネスシーンにおいて、「支払い期限について話している」のか、「納期を延ばしたい」のか、それとも「単に少し時間がほしい」のかによって、適切な英語表現は異なるのです。
それぞれの状況に応じた表現を使わないと、不自然な英語になってしまうことがあるので注意しましょう。
「猶予」の英語表現3選

ここでは、ビジネスシーンでよく使われる「猶予」を指す英語表現を3種類紹介します。
- grace period
- extension
- extra time / more time / additional time
grace period
英語で「猶予」「猶予期間」を指すもっとも一般的な表現は、grace periodです。
「本来の期限を過ぎても、すぐにペナルティや不利益を受けずに認められる、一定の期間」という意味で使われます。
たとえば、支払い期限が6月30日で、その後7日間は、支払いが遅れても追加料金が発生しないのであれば、その7日間がgrace periodといえます。
以下の例文を参考にしてください。
支払いが遅れた場合、7日間の猶予期間を設けています。
またgrace periodは、契約やサービスの更新などについても使えます。
顧客には契約を更新するための30日間の猶予期間があります。
grace periodは、「期限を過ぎても一定期間は受け付けてもらえる」というニュアンスで使われます。
「期限そのものを延ばす」という意味合いでないことに注意しましょう。
extension
extensionは、「決められていた期限を後に延ばす」という意味で「猶予」を指す表現です。
たとえば、報告書の提出期限が金曜日だったものを、翌週の月曜日まで延ばしてもらう場合、その「延長」が extensionです。
以下の例文を参考にしてください。
締め切りの延長をお願いできますか?
2週間の延長を認めてもらうことができました。
extensionは、「deadline(締め切り)」や「due date(支払期日・提出期限など)」、「contract(契約)」など、期限や期間を表す言葉と相性のいい表現です。
ここで、先ほど紹介したgrace periodとの違いを確認しておきましょう。
「支払い期限が6月30日で、その後7日間は支払いが遅れても、追加料金が発生しない」7日間がgrace periodでしたよね。
その一方で、「6月30日の提出期限を、7月7日まで延ばしてもらう」のであれば、extensionがふさわしいのです。
extra time / more time / additional time

何かを終えるために、予定していた時間よりも多くの時間が必要な場合、口頭でシンプルに「猶予」を求めるなら、extra timeや more timeが使えます。
提案書を確認するために、もう少し時間が必要です。
決定するために、もう少し時間が必要です。
extra timeは「予定していた時間に加えて、追加で与えられる時間」というニュアンスがあります。
一方、more timeは「さらに時間が必要」という意味をシンプルに伝える表現です。
そしてadditional timeは、extra timeや more timeと似た意味ですが、ややフォーマルで、ビジネスメールや文書でも使いやすいという特徴があります。
レポートを完成させるために、追加の時間を設けることができます。
書類を準備するために、さらに3日間の猶予を設けることができます。
ここで、extensionとの対比を見ておきましょう。
extensionは、すでに設定されている「期限・期間を延長すること」に焦点があります。
一方、additional timeは、「追加で時間を与える・必要とする」ということに焦点があります。
たとえば、以下の例文では、期限そのものを延長することに焦点が当たっています。
締め切りを延長する必要があります。
一方で、以下の例文は、「契約書を確認するための時間がもっと必要」ということに重点を置いています。
契約書を確認するために、追加の時間が必要です。
期限そのものを延長してほしいのか、単にもう少し時間が必要なのか、伝えたい内容に応じて使い分けましょう。
参考:postponement

「猶予」の英訳として、postponementという表現が挙げられることもあります。
ただ、postponeやpostponementはビジネスシーンにおいては、少し違うニュアンスで使われることが多いです。
postponementは、基本的に予定していたことを後の日時に延期するという意味で使われます。
たとえば、会議を延期する時に、以下のような表現が使われます。
会議は来週月曜日に延期されました。
一方、「締め切りを1週間延ばしてもらう」といった場面では、postponementよりもextensionが自然です。
締め切りを1週間延長していただきたいです。
ここをone-week postponementとしてしまうと、意味は通じるものの、不自然な英語になってしまうので注意しましょう。
のちの章で詳しく解説します。
参考:deferment
defermentも、「猶予」の英訳として紹介されることがあります。
defermentは、基本的に何かを行う時期を先に延ばすこと、特に支払いや義務などを繰り延べることを表します。
支払いの繰り延べをお願いしました。
その会社は納税の猶予を申請しました。
このように、「payment(支払い)」や「tax(税金)」など、「本来なら今行うべきことを後に回す」という場面ではdefermentが使われます。
ただし、defermentは少しフォーマルすぎる表現ともいえます。
日常的なビジネスのやり取りでは、extensionやmore timeのほうが伝わりやすいでしょう。
「猶予」の英語表現まとめ

以下に、これまで紹介した「猶予」を指す英語表現を表にまとめます。
| 表現 | イメージ | 使われるシーン |
| grace period | 期限後も認められる「猶予期間」 | 支払い期限の延長、契約更新の猶予 |
| extension | 決められた期限・期間を「延長する」 | 納期・提出期限・契約期間などの延長 |
| extra time / more time / additional time | 予定より「もう少し時間をもらう・追加する」 | 判断・検討、作業、準備、回答などに追加の時間をもらう |
とくに、以下のポイントをおさえておくとよいでしょう。
- 期限を過ぎても認められる → grace period
- 期限そのものを延ばす → extension
- 単純にもう少し時間が必要 → extra time / more time / additional time
ビジネスシーンで使える!「猶予」の実践フレーズ

この章では、これまで紹介した「猶予」を指す英語表現の実践的フレーズを、シーン別に紹介します。
- 納期に猶予をもらう時
- 提出期限に猶予をもらう時
- 契約・料金の支払いに猶予を設ける時
- 判断・検討するための時間をもらう
それぞれ詳しくみていきましょう。
納期に猶予をもらう時
「納期に猶予をもらいたい」と英語で伝える場合は、extensionやmore timeが使えます。
すでに決められている納期を延ばしてほしい場合は、extensionが便利です。
「request an extension(延長をお願いする)」や「get an extension(延長を認めてもらう)」が使われます。
プロジェクトの期限を延長してもらうことができました。
一方、「納期を延ばしてほしい」と期限そのものに焦点を当てるのではなく、「もう少し時間が必要です」と伝えるなら、more timeやextra timeが自然です。
デザインを仕上げるのに、もう少し時間が必要です。
注文を完了するために、もう少し時間が必要です。
このように、extensionは「期限を延ばす」こと、more time / extra timeは「作業のために追加の時間が必要であること」に焦点が当たっています。
提出期限に猶予をもらう時

レポートや書類、申請書などの提出期限に猶予をもらいたい場合も、基本的には extensionやmore timeが使えます。
すでに決められている提出期限を延ばしてほしい場合は、request an extensionという表現が便利です。
提出期限を延長していただくことはできますか?
ちなみに、「2日間の猶予をもらいたい」といったように、延長する期間を具体的に伝えることもできます。
レポートの提出期限を2日延長していただけますか?
そして、「提出するためにもう少し時間が必要です」と伝えるなら、more timeを使うのが自然です。
書類を準備するために、もう少し時間が必要です。
契約・料金の支払いに猶予を設ける時

契約に関する料金や請求書の支払いに「猶予を設ける」と言いたい場合は、「何を」「どのように」延ばすのかによって、表現を選びます。
たとえば、支払い期限を延長するのであれば、extensionやmore timeが使えます。
支払い期限を2週間延長することができます。
支払いのために、もう少し時間をいただけますか?
一方で、契約や料金について「一定期間は支払いが遅れても認める」というルールを設ける場合は、grace periodが適しています。
支払いが遅れた場合、10日間の猶予期間を設けています。
支払いに関する「猶予」でも、英語では意味によって表現が変わります。
支払い期限を延長するならextension、期限後も一定期間認めるなら grace periodというように、思考を整理しておきましょう。
判断・検討するための時間をもらう時
ビジネスシーンでは、「期限を延ばしてほしい」という意味合いだけでなく、「判断や検討のために、もう少し時間がほしい」という意味で「猶予」を使うこともありますよね。
このような場合は、シンプルにmore timeやextra timeを使うと自然です。
ご提案について検討するために、もう少し時間が必要です。
契約書を確認するために、もう少し時間が必要です。
また、メールや文書などで少しフォーマルに伝えたい場合は、additional timeも使えます。
契約書を確認するため、もう少しお時間をいただけると幸いです。
日本人が間違えやすい「猶予」のNG表現

NG①:猶予=「grace period」と訳を固定する
grace periodは「猶予期間」を表すもっとも一般的な表現といえますが、日本語の「猶予」をいつでも grace periodに置き換えられるわけではありません。
grace periodが指すのは、「本来の期限は変えず、期限を過ぎても一定期間は認める」ということです。
そのため、「納期を1週間延ばしてもらえますか?」と言いたい時に、grace periodを使うと不自然になってしまう場合があります。
このように言うと、「納期後に1週間の猶予期間を設けてもらえますか?」という意味になり、本来の意図とは異なってしまいます。
「納期そのものを後に延ばす」という文脈では、以下のように、extensionを使うのが自然です。
納期を1週間延長してもらえますか?
また、「考える時間がほしい」という文脈でも、grace periodという表現が不自然になってしまうことがあります。
この例文は、「判断期限を過ぎても認められる猶予期間が必要」というような特殊な意味に聞こえてしまいます。
以下のように言い換えるのがおすすめです。
判断するために、もう少し時間が必要です。
NG②:deadlineにpostponementを使う

「期限を延期する」という文脈では、postponeやpostponementを選びたくなる方も多いでしょう。
たしかにpostponement は「延期」を指しますが、会議やイベントなど、「予定されている出来事」を「後の日程に移す」という意味で使われます。
そのため、以下のように言うと、「決められた納期を、別の日程に移す」という意味合いが生まれ、不自然になってしまいます。
ビジネスシーンにおいて、「決められた期限を後ろに延ばす」という意味で「猶予をもらう」場合は、postponementよりもextensionの方が自然な場合が多いです。
以下のように言い換えましょう。
納期を2日延長する必要があります。
まとめ

この記事で紹介した「猶予」を指す英語表現を、あらためて表にまとめます。
| こんな「猶予」なら | 使う表現 |
| 期限を過ぎても一定期間認める | grace period |
| 納期・提出期限を延ばす | extension |
| もう少し時間が必要 | more time / extra time |
| 追加の時間を与える(ややフォーマル) | additional time |
英語ビジネスシーンにおいて、納期や支払い、意思決定などについて、必要な時間を明確に伝えることは、健全なコミュニケーションです。
ただ、理由や具体的な期限を示さずに「待ってほしい」とだけ伝えると、相手に不安を与える可能性があります。
「猶予がほしい」と頼む時には、「なぜ時間が必要なのか」「いつまで待ってほしいのか」を明確にするよう心がけましょう。
extension(期限を延ばす)と grace period(期限後も認める)——似ているようで、伝わり方はまるで違います。
英語は、こうした「わずかな差」を押さえられるかどうかで、印象が大きく変わります。
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ホール 奈穂子
株式会社ギャビーアカデミー代表取締役
元九州大学職員。TOEIC 990、IELTS 7.5(Speaking 8.0)を誇る、英語学習独学のスペシャリスト。27歳から英語を学び直し、自らの人生で英語習得がもたらす可能性を証明。米国赴任、留学プログラムや海外大学との共同学位取得プログラムの設計・運営に携わった経験から、日本人の英語学習における課題を深く理解し、効果的な学習方法を追求。その集大成として、東京大学と共同で、脳科学に基づいた独自の英語スピーキング習得メソッドを開発。現在カナダ・バンクーバーに在住。世界を舞台に活躍する日本人ビジネスパーソンの育成に情熱を燃やし、日本とバンクーバーを往復しながら精力的に活動中。趣味はカナダを舞台にしたサケ釣り。

