実は、英語の音は日本語に比べてはるかに多いのです。
また、単語同士がくっついたり、音が脱落したりする「音声変化」も多く見られます。
この記事では、英語の「音」を理解するための基礎知識を紹介します。
英語の発音を良くしたい人・リスニング力をアップさせたい人はぜひ参考にしてください。
英語の音を理解するメリットとは
詳しく見ていきましょう。
英語が通じる・カッコよく発音できる
文法や単語の知識が十分あるのに、発音がネックになって英会話が通じないという人も多いと思います。
それは、英語の音に対する正しい知識がないことが理由かもしれません。
英語の音を正しく理解すれば、英語の音を正しく発音できるようになり、自然とネイティブに近いかっこいい発音を手に入れることもできます。
通じる発音、ネイティブに近い発音を手に入れると、自信をもって英会話に臨めるというのも嬉しいポイントです。
発音がネックになって英会話が通じない人や、通じるけれど日本人訛りがコンプレックスでなかなか発言できないという人は、英語の音を正しく理解することから始めましょう。
英語の長文が聞き取れるようになる
英語の音が「早すぎて聞き取れない」と感じている場合、その原因は、ただスピードについていけていないせいではなく、英語の音のルール、特に音声変化を把握できていないことが原因かもしれません。
英語の音のルールを把握せず、英語の音をカタカナで理解していると、英語の音を聞き取るのは非常に難しくなります。
それに対して、英語の個々の音、音声変化、リズムを正しく理解すると、リスニング力が大幅にアップします。
日本語と英語の音の数は?
●「ア」に当たる音が /ɑ/ と /ʌ/ と /æ/と /a/ の4つ
●「イ」に当たる音が /ɪ/ と /i:/ の2つ
●「ウ」に当たる音が /u:/ と /ʊ/ の2つ
●「エ」に当たる音は /ɛ/ と /e/
●「オ」に当たる音は /ɔ:/ と /o/
●「ア・イ・ウ・エ・オ」のどれとも違う /ǝ/
さらに、/i:/ のような「長母音」や、/aɪ/ などの「二重母音」も「母音」としてとらえられるので、英語の母音は日本語と比べてはるかに多いといえます。
子音に関しても、日本語の子音が13個であるのに対し、英語の子音は24個と、こちらも英語の方が圧倒的に多いです。
そしてこれらの音の違いは、単語の意味の違いに影響を及ぼします。
例えば「hat /hæt/」という単語は「帽子」という意味になりますが、「hut /hʌt/」という単語は「小屋」という意味です。
それぞれをきちんと区別して発音しないと、誤解を招いたり、聞き手に負担をかけたりして、英語でのコミュニケーションに支障が生じる可能性が高いです。
英語のそれぞれの音と発音の仕方・単語の例
英文だけでなく、お手本の英語音声と、そのスクリプト(書き下し文)があるものを選びましょう。
初心者の方は、いきなりTED Talksのスピーチに挑戦するなどして、難しすぎる教材を選びすぎないことをおすすめします。
前のセクションでもお伝えしたように、スピーキングを上達させるためには発話の「量」をこなすのが重要なので、自分が好きなテーマ、興味が持てる内容の教材を選ぶと挫折しにくくなります。
まずは英語音声を通して何回か聞きます。その後、スクリプトを見ながら音読します。この時、なるべくお手本の音声に近い発音を心がけましょう。カタカナ英語で発音していても、スピーキングは上達しません。
そして、音読はあくまでスピーキングの練習の入口ととらえた方が良いでしょう。上手に音読できるようになったと感じたら、リピーティングのトレーニングに進みましょう。最終的に「シャドーイング」ができるようにするのが目標です。
音読からリピーティング、オーバーラッピング、シャドーイングに至るまで、全く同じ教材を使い続けると、初心者でも比較的簡単にシャドーイングができるようになります。
母音
音声記号
例
/æ/
apple /æpl/
/ɑ/
want /wɑnt/
/ʌ/
but /bʌt/
/a/
right /raɪt/
/ɪ/
give /gɪv/
/iː/
feel /fiːl/
/ʊ/
good /gʊd/
/uː/
group /gruːp/
/ɛ/
bed /bɛd/
/eɪ/
great /ɡreɪt/
/ɔː/
talk /tɔːk/
/oʊ/
road /roʊd/
/ə/
bird /bərd/
ちなみに、2つの母音を組み合わせた「二重母音」は以下の通りです。
●/aɪ/(例:buy)
●/aʊ/(例:house)
●/eɪ/(例:wait)
●/ɔɪ/(例:boy)
●/oʊ/(例:road)
それぞれの音について、発音のコツを見ていきましょう。
日本語の「ア」に当たる音
/ʌ/ は日本語の「ア」に近い音です。短めに発音するのがコツです。
例:cup /kʌp/、bus /bʌs/
/ɑ/
/ɑ/ は、やや日本語の「オ」に近い「ア」のような音です。短めに発音しましょう。
例:not /nɑt/、top /tɑp/
/æ/
/æ/ は「エ」に近い「ア」のような音です。口を横に広げて「エ」の音の形をとったまま、「アー」と声を出しましょう。
例:can /kæn/、have /hæv/
日本語の「イ」に当たる音
/ɪ/ は日本語の「イ」と「エ」の中間のような音です。短めに発音するのがポイントです。
例:it /ɪt/、image /ímɪdʒ/
/i:/
/i/ は日本語の「イ」に近い音です。/i:/ と長母音で使われることが多いため、長めに発音するのがコツです。
例:unique /juːníːk/、sleep /slíːp/
日本語の「ウ」に当たる音
/ʊ/ は少し日本語の「オ」に近い「ウ」の音です。「オ」の口の形で「ウ」と発音するイメージです。短めに発音するのがポイントです。
例:full /fʊl/、book /bʊk/
/u:/
/u/ は日本語の「ウ」に近い音です。/u:/ と長母音で使われることが多いため、長めに発音するのがポイントです。
例:group /grúːp/、news /njuːz/
日本語の「エ」に当たる音
/ɛ/ は日本語の「エ」のような音です。もう少し舌を下げて、口を大きく開け気味にすると、ネイティブに近い発音になります。
例:next /nékst/、many /méni/
日本語の「オ」に当たる音
/ɔ:/ は、やや日本語の「ア」に近い「オ」のような音です。「オ」よりも口を縦に大きく開けて発音します。
例:walk /wɔːk/、law /lɔ:/
日本語にない音
/ǝ/ は「中間音」といい、「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」すべての中間に位置する音です。
日本語にない音なので、習得するのはなかなか難しいかもしれませんが、この音を正しく発音できるかどうかが、英語の発音を左右します。
/ǝ/ を発音するには、力を抜いて口をだらしない感じで開けて、「アー」と発音します。
例:about /əbáut/、ago /əgóu/
子音
音声記号
例
/æ/
apple /æpl/
/ɑ/
want /wɑnt/
/ʌ/
but /bʌt/
/a/
right /raɪt/
/ɪ/
give /gɪv/
/iː/
feel /fiːl/
/ʊ/
good /gʊd/
/uː/
group /gruːp/
/ɛ/
bed /bɛd/
/eɪ/
great /ɡreɪt/
/ɔː/
talk /tɔːk/
/oʊ/
road /roʊd/
/ə/
bird /bərd/
そして英語の子音には、「無声音」と「有声音」の区別があります。
例えば /k/ と /g/ は、同じ口の形、舌の位置ですが、/k/ を発音する時にのどに手を当てると、喉は動きません。
その一方で /g/ を発音する時にのどに手を当てると、喉が振動するのが分かると思います。
/k/・/g/
舌の付け根を持ち上げて、口の奥の上側と、瞬間的に破裂させます。
例:come /kʌ́m/、back /bǽk/
例:get /get/、bag /bǽg/
/s/・/z/
/s/ は息だけを吐く無声音、/z/ は喉の奥から音を響かせる有声音です。
例:see /síː/、sing /siŋ/
例:busy /bízi/、zoo /zúː/
/ʃ/・/ʒ/
「シュ」の口の形のまま「シー」と息を吐くと/ʃ/、「ジー」と息を吐くと/ʒ/ の音になる有声音と無声音のペアです。
例:she /ʃíː/、shine /ʃáɪn/
例:usual /júʒəwəl/、vision /víʒən/
/m/・/n/・/ŋ/
/m/ は両唇を閉じて、/n/ は舌先を歯茎の裏に付けた状態、/ŋ/ は舌の付け根を持ち上げた状態で、「ンー」と鼻の奥から音を響かせます。
無声音のペアはなく、すべて有声音です。
例:money /mʌ́ni/、dream /dríːm/
例:know /nóu/、under /ʌ́ndər/
例:long /lɔ́ŋ/、pink /píŋk/
/tʃ/・/dʒ/
有声音と無声音のペアです。
例:chair /tʃeər/、picture /píktʃər/
例:Japan /dʒəpǽn/、large /lɑ́rdʒ/
/ʒ/ と /dʒ/ の区別を難しく感じる人もいるかもしれませんが、/ʒ/ は音声学的に「摩擦音」に分類されるのに対し、/dʒ/ は「破擦音(はさつおん)」に分類されるということを覚えておくと、理解しやすいかもしれません。
「破擦音」は、「破裂音」と「摩擦音」を同時に発音するような音で、日本語でいうと「チ」や「ツ」が「破擦音」に分類されます。
/ʒ/ は摩擦音なので、唇を突き出した状態で「ジー」と息を摩擦させます。
/dʒ/ は破擦音なので、息を解放させながら勢いよく「ジッ」と摩擦させるイメージです。
/h/
無声音のみで、有声音のペアはありません。
例:hand /hǽnd/、home /hóum/
/p/・/b/
有声音と無声音のペアです。
例:peach /píːtʃ/、penguin /péŋgwin/
例:bear /beər/、build /bíld/
/f/・/v/
/f/ を発音するには、前歯を下唇の少し内側につけた状態で息を吐いて摩擦させます。
/v/ は同じ口の形で息を吐きながら、喉の奥から音を響かせましょう。
有声音と無声音のペアです。
例:friend /frend/、feel /fi:l/
例:very /veri/、value /vǽljuː/
/r/・/l/
日本人が習得するには難しいように思う人も多いかもしれませんが、発音を正しく理解した上でしっかりトレーニングすれば、必ず発音できるようになります。
/r/ は唇をしっかり丸めて突き出し、喉の奥の方向に舌を引きましょう。
/l/ は舌先を上の歯茎の内側につけ、はじくように発音しましょう。
どちらも有声音で、無声音のペアはありません。
例:right /raɪt/、worry /wə́(ː)ri/
例:lion /láɪən/、will /wɪl/
/t/・/d/
/t/ は破裂と同時に息だけを吐き、/d/ は破裂と同時に喉の奥から音を響かせましょう。
有声音と無声音のペアです。
例:time /taɪm/、teeth /tíːθ/
例:drink /drɪŋk/、door /dɔr/
/θ/・/ð/
発音する時は、舌先を上の歯につけてその間から息を吐きます。
有声音と無声音のペアです。
例:think /θíŋk/、both /bóuθ/
例:that /ðǽt/、mother /mʌ́ðər/
/θ/・/ð/を強いてカタカナで書けば「ス」「ズ」となるかもしれませんが、/s/・/z/ とはしっかり区別して発音しましょう。
「mouse /máus/(ネズミ)」と「mouth /máuθ/(口)」のように、発音によって意味の違いが生じてしまうので、正しく発音しないと、コミュニケーションに支障が生じる可能性があります。
/j/
口の中は舌を盛り上げて上あごへと近づけて、狭めて音を出します。
/j/ は有声音のみで、無声音のペアはありません。母音に近い子音なので、「半母音」とも呼ばれます。
例:year /jíər/、million /míljən/
/w/
両唇を丸めて突き出し、「ウゥー」と振動させます。
/w/ は有声音のみで、無声音のペアはありません。こちらも母音に近い音です。
例:we /wíː/、wide /waɪd/
音声変化・リズム・イントネーションも重要
音声変化
音声変化の例として代表的なのが、リンキング(連結、リエゾン)やリダクション(脱落)です。
次の例文を見てください。
Let’s take a picture. 写真を撮りましょう
この文は、「レッツ・テイク・ア・ピクチャー」とは発音されません。「take」の語尾の /k/ と、次の 「a」がくっついて、「テイカ」のように発音されます。これがリンキングです。
また、「Good bye.」という表現は、「グッド・バイ」とは発音されず、「グッバイ」となりますよね。
自然な発話の中では、「Good」の語尾の /d/ は脱落してしまうのです。
音声変化は、ほかにアシミレーション(同化)・ラ行化(フラッピング)・弱化(コントラクション)
などがあります。
リズム
そして英語は特にリズムが重視される言語です。逆にリズムさえ合っていれば、細かい発音が間違っていても英語は通じるとさえ言われています。
英語のリズムには、「内容語」と「機能語」という考え方が関係しています。
「内容語」とは、名詞・動詞・形容詞など、文の内容を表す重要な単語です。それに対し「機能語」とは、前置詞・代名詞など、文法をサポートする単語です。
英語では、内容語を強くゆっくり発音し、機能語を弱く素早く発音します。
例えば、以下の例文を見てください。
Mary went to the office to pick up some documents.
メアリーは会社に書類を取りに行った。
この例文は、内容語を中心に次のようなまとまりに分かれます。
Mary | went | to the office | to pick up | some documents.
英語のリズムとしては、内容語を強くゆっくり読んで、これらのまとまりを同じくらいの長さで読むのが理想的です。
例えば「to the office」の「to the」は弱く息を吐く程度に「タダッ」と素早く発音します。
「some documents」の「some」も「スム」と弱く短く発音しましょう。
イントネーション
しかし、英語ではイントネーションによってニュアンスが大きく変わってしまうケースがあります。
次の例文を見てください。
He is drinking coffee.(彼はコーヒーを飲んでいます)
この文で、
HE is drinking coffee.
このように「He」を強く発音すると、「彼がコーヒーを飲んでいるんです(私は飲んでいません)」といったニュアンスになります。
一方で、
He is drinking COFFEE.
このように「coffee」を強く発音すると、「(紅茶大国イギリスで)コーヒーを飲むなんて!」といったニュアンスに変わってしまいます。
このように、英語の音を理解する上では、リズム・アクセント・イントネーションも重要な要素となります。
英語の個々の音と一緒に、ぜひ把握しておいてください。
まとめ:まずは「英語の音」を理解しよう
そのため、日本人にとって英語の音は習得しづらく、理解しづらいものになっています。
そして、英語の「音」を正しく理解しないまま、強引に英語学習を進めてしまうと、「文法と単語の知識は十分にあるのに、なぜか英会話が通じない」という現象が起きてしまいます。
日本人訛りの発音は、日本人が思っているより、通じにくく聞き取りづらいものです。
理解しづらい英語は聞き手に負担をかけてしまうため、コミュニケーションに支障が生じる場合も多いでしょう。
実際に英語話者と接する機会がある人ほど、そのことを痛感していると思います。
日本人訛りの英語にコンプレックスを抱いてしまい、自信をもって英会話に臨めない人も多いのではないでしょうか。
しかし、英語の「音」について正しく理解し、正しい方法でトレーニングを積めば、ネイティブに近い発音を手に入れることは誰にでも可能です。
ただ、「英語の音を理屈で理解する」というステップを踏まずにトレーニングを始めてしまう人が多いのも事実です。
まずはこの記事をもとに、英語の個々の音、音声変化、リズム、イントネーションについて知識として把握してください。
発音トレーニングを進める上で、英語の「音」の知識は、ゲームの「攻略本」のように役立つと思います。