グローバル化が進む現代において、建築業界でも、英語でプレゼンテーションを行う機会は増えていますよね。
海外のクライアントへの提案、国際的なコンペでの発表、または多国籍チームとのプロジェクトなどにおいて、英語でのプレゼン能力は重要なスキルの一つです。
しかし、日本では経験豊富な建築家の方でも、「プレゼンの構成をどう組み立てるべきか悩む……」「自信を持って話すのが難しい……」と感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、建築業界において英語でプレゼンを成功させるためのポイントを、具体的なフレーズや実践的なコツとともに解説します。
英語が苦手な方でもスムーズにプレゼンを行うためのコツも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
建築業界での英語プレゼンテーションの基本構成
ここでは、英語でのプレゼンテーションをどのように組み立てればいいか、「環境に配慮した集合住宅」についてコンセプトを説明するという設定で紹介します。
英語のプレゼンテーションは、以下のような3部構成で進めるのが一般的です。
- 導入
- 本題
- まとめ
それぞれの段階で使えるフレーズを見ていきましょう。
導入
導入部分では、簡単に自己紹介をし、プレゼンテーションの目的を明確に伝えます。
例文とともに見ていきましょう。
まずは自己紹介です。
皆さん、こんにちは。私の名前は山田太郎です。ギャビー社で建築に携わっております。
そして、プレゼンの目的を伝えます。
本日は、環境に優しいアパートのプロジェクトについてご紹介します。
本日は、環境に優しいアパートのプロジェクトについてご紹介します。
このプレゼンでは、コンセプト、使用した素材、そしてデザインの特長について説明します。
この建物がどのようにエネルギー消費を減らし、快適な住空間を作るのかをお伝えできればと思います。
それでは、このプロジェクトの背景からお話しします。
このように、導入部では、自己紹介、プレゼンの目的、簡単な流れを紹介しましょう。
そして最後に、「Let’s start with〜.」や「Let’s begin by〜.」などを使って、本題への移行を示すと、聞きやすいプレゼンになります。
本題
導入が終わったら、いよいよ本題に入ります。
ここでは、コンセプトの説明・デザインの特徴・技術的な詳細・ベネフィット(利益)を題材に、例文を挙げます。
コンセプト
コンセプトの説明は、以下のように進めることができます。
この建物は、環境に優しく、快適に過ごせるように設計されています。
私たちは、自然の光や新鮮な空気を活かした空間を作りたいと考えました。
このデザインは、夏は涼しく冬は暖かい、伝統的な木造家屋からヒントを得ています。
デザインの特徴
デザインの特徴(素材・構造・環境への配慮)は、以下のように伝えるとよいでしょう。
私たちは、環境に配慮して、地元の木材とリサイクルコンクリートを使用しました。
大きな窓からたくさんの太陽光が入るので、昼間はあまり電気を使いません。
屋根では雨水を集め、それを植物の水やりや清掃に使うことができます。
「eco-friendly(環境にやさしい)」という表現は、ぜひ覚えておきましょう。
技術的な内容
技術的な詳細(寸法・工法・施工プロセス)は、以下のように伝えます。
この建物の総床面積は2,500平方メートルです。
モジュール工法を使っており、工事を早く進められ、廃棄物も減らせます。
多くの部品は工場で作られ、現場で組み立てられました。
総床面積の言い方(〇〇square meters in total)や、「モジュール工法(modular construction method)」などの用語は、日頃から語彙を増やしておくことをおすすめします。
ほかに覚えておきたい基礎的な用語としては、以下のようなものがあります。
- energy-efficient(省エネの)
- reinforced concrete(鉄筋コンクリート)
- insulation(断熱材)
- foundation(基礎)
- prefabrication(プレハブ工法)
- building code(建築基準法)
ご自身の専門分野に合わせて、必要な語彙を増やしておくことをおすすめします。
ベネフィット(利益)
プレゼンテーションでは自分が伝える内容がいかに相手の利益(ベネフィット)になるかを伝えることがカギになるでしょう。
建築業界における英語プレゼンで、強調したいベネフィットとしては、以下のようなものが挙げられるかと思います。
- コスト削減
- 環境への配慮
- 快適性・機能性
- デザイン(視覚的)の魅力
- 施工の効率性
コスト削減のベネフィットについて伝えるには、以下のような言い方があります。
プレハブ材料を使用することで、人件費を大幅に削減できます。
この建物は維持管理の手間が少なく、長期的にコストを節約できます。
環境への配慮としては、以下のような言い方があるでしょう。
この建物は、従来のデザインと比べて消費電力が30%削減できています。
ソーラーパネルを取り入れることで、エネルギー効率を高め、二酸化炭素排出量を削減します。
「consume」は「消費する」という意味の英単語です。「より少ない電力を(less energy)」などという言い方も使いこなせるようにしましょう。
快適性・機能性の向上をアピールするには、以下のような言い方ができます。
この断熱システムにより、室内の温度が安定し、エアコンの使用を減らせます。
This insulation system keeps the indoor temperature stable, reducing the need for air conditioning.
この断熱システムにより、室内の温度が安定し、エアコンの使用を減らせます。
広い廊下と段差のない入口により、誰にとっても利用しやすい空間になります。
「accesible(誰でもその場所に行きやすい)」は、便利な表現なのでぜひ覚えておきましょう。
デザイン(見た目)の魅力をアピールするには、以下のような言い方ができます。
伝統的な要素と現代的なデザインを融合させ、独自の外観を実現しました。
このデザインは都市の景観を向上させ、周囲の環境と調和します。
この内装は、モダンと伝統的な要素を融合させた独自のデザインです。
日本語では「インテリア」は家具・照明などの「室内装飾品」を指すことが多いですよね。
ただ英語の「interior」は、「内装」や「室内」など、より広い意味を表すので覚えておきましょう。
施工の効率性をアピールすることもありますよね。
この軽量構造により、輸送と設置が簡単になります。
デジタルモデリングを活用することで、ミスを最小限に抑え、施工の精度を向上させます。
これらの文は一例にすぎませんが、参考になれば幸いです。
まとめ
そして最後に、プレゼンの要点を簡潔にまとめましょう。
さらに結びの一文として、聴衆の質問を受け付けるとよいでしょう。
例えば、以下のようにまとめます。
まとめの最初は、以下のような言い方がおすすめです。
まとめると、このプロジェクトは持続可能性、省エネルギー、そしてモダンなデザインに重点を置いています。
そして、重要なポイントを再確認しましょう。
私たちは木材やリサイクルコンクリートなどの環境に優しい素材を使用しました。
デザインは自然換気と採光を活かし、エネルギー消費を抑える工夫をしています。
また、モジュール工法を採用し、建設をより速く、効率的にしました。
最後に、今後の展望と結びの言葉でしめくくります。
このプロジェクトは、将来の持続可能な建築のモデルになり得ると考えています。
ご清聴ありがとうございました。ご質問があれば、お答えいたします。
最後の文ですが、日本人の方は、「ご遠慮なくご質問ください」という意味で、「Don’t hesitate to ask any questions.」と言いたくなるかもしれません。
ただ、この言い方は少しカジュアルで、学生同士のプレゼンや、社内の気心の知れた間柄でのプレゼンで使うべき言い方です。
クライアント向けのフォーマルなプレゼンでは、以下のように質問を受け付けましょう。
- I would be happy to answer any questions you may have.
ご質問があれば喜んでお答えします。
- Please let me know if you have any questions.
ご質問がありましたら、お知らせください。
- I appreciate your attention, and I’m open to any questions.
ご清聴ありがとうございました。ご質問をお受けします。
建築業界でプレゼンテーションをスムーズに進めるための英語表現
ここでは、主に本題のパートを進める時、プレゼンをスムーズに進めるための簡単なフレーズを紹介します。
英語でプレゼンを進める時、原稿をベタ読みするのはおすすめできません。
むしろ、言葉に頼りすぎず、図やグラフなど、視覚資料も活用して、聴衆を話に引き込むことが重要です。
それでは、英語でプレゼンをスムーズに進めることができる具体的な例文を見ていきましょう。
話を始める・切り替える時に使えるフレーズ
本題を始めたり、話題を切り替えたりするときは、「ここが切り替え地点だ」と分かりやすいよう、道しるべの文を挟みましょう。
このプロジェクトのコンセプトからご説明します。
では、デザインの特徴の説明に移りましょう。
強調したい部分を伝えるフレーズ
プレゼンを行う際は、「ここが一番言いたい!」というポイントがありますよね。
棒読みでフラットに伝えてしまうと、
伝えたいポイントをきちんと強調するには、以下のような表現を使います。
この建物の重要な特徴の一つは、環境に優しいデザインです。
持続可能な素材の使用について強調させてください。
ストレートに「important~」と言ってもいいですし、「強調する」という意味で「highlight」という動詞を使うこともできます。
図やグラフなどを見せる時に使えるフレーズ
また、先ほどお伝えしたように、英語でのプレゼンでは、図やスライドなどを利用して、聴衆の興味を引き付けるのも重要なコツです。
こちらの図をご覧ください。
では、この図面を見てみましょう。
これは建物の平面図です。
ここに、プロジェクトの立面図があります。
この図の通り、建物の中央には開放的な空間があります。
このグラフは、私たちのデザインの省エネ性能を示しています。
青い線はエネルギー消費量を時系列で示しています。
左側の棒は、従来の材料のコストを示しています。
この図の部分は、構造のサポートシステムを強調しています。
ぜひ参考にしてください。
英語でのプレゼンテーションを成功させるコツ
ここでは、英語プレゼンを成功させるための簡単なコツについてお伝えします。
具体的なコツは、以下のようなものです。
- シンプルでわかりやすい英語を使う
- 話の流れを明確にする(3部構成を意識する)
- 視覚資料を活用する
- 発音とイントネーションを意識する
- 質疑応答の準備をしておく
シンプルでわかりやすい英語を使う
英語のプレゼンテーションを成功させるためには、シンプルで分かりやすい英語を使うのがおすすめです。
難しい言い回しの方がプロフェッショナルな印象を与えるのでは、と思われるかもしれませんが、プレゼンで最も大事なのは、「伝えること」です。
さらに、国際的なビジネスシーンでは、英語を話す人材はネイティブより非ネイティブがほとんどです。
メッセージが誤って伝わることを避けるためにも、分かりやすく簡潔な英語を心がけましょう。
例えば、以下の2つの例文を見てください。
私たちのデザインは、エネルギー効率の高い持続可能な建物を作るために、環境に優しい様々な技術を導入しています。
私たちのデザインは省エネと持続可能性を目指し、環境にやさしい設計です。
どちらの文も同じようなことを言っていますが、前者のように長くダラダラと話すより、後者のように短く簡潔な文が、国際社会ではより好まれます。
また、難しい単語を避けるのも重要です。次の2つの例文を参考にしてください。
建設効率を最適化するため、高度なモジュール式プレハブ技術を利用しています。
効率的な建設のため、シンプルなモジュール工法を使っています。
日本の難しい企画書を翻訳ソフトにかけてしまうと、1つ目のような文が提示されるかもしれませんが、2つ目の文のように、自分の言葉でシンプルにまとめた方が、熱意も伝わるでしょう。
話の流れを明確にする(3部構成を意識する)
冒頭の部分でも触れましたが、英語のプレゼンテーションでは、話の構成をはっきりさせることが重要です。
プレゼン自体、「導入→本題→まとめ」の3部構成で進めることがおすすめですが、本題の内容も、3つくらいにポイントを絞って話すと分かりやすくなります。
視覚資料を活用する
先ほどもお伝えしたように、プレゼンテーション内では、視覚資料を効果的に使うこともおすすめです。
プレゼンではスライドを使うことも多いと思うのですが、スライドには文章を詰め込みすぎないようにしましょう。
1つのスライドに載せるのは短いキーワードにとどめ、図表自体もシンプルなものにするとよいでしょう。
発音とリズム・イントネーションを意識する
言葉選びと同じくらいあるいはそれ以上に気を付けたいのが、実は発音とイントネーションです。
せっかく素晴らしい内容を発信しているのに、発音のせいで理解してもらえなかったら悲しいですよね。
ただ、日本人の英語の発音は、世界的にあまり評判がよくありません。
ネイティブのように完璧な発音を求める必要はありませんが、アプリや発音コーチングなどを利用して、ご自身の発音を今一度見直してみてください。
そして、英語の発音においては、リズムやイントネーションも大事です。
日本の英語学習で軽視されがちな部分ではありますが、「リズムが合っていれば発音は多少間違っていても通じる」と言われるほど、重要な要素です。
もし、英語プレゼンテーションまでにあまり時間のない方は、以下のポイントに注意しておきましょう。
- 焦らずに、意識的にゆっくり話す
- 重要な単語は少し強く発音する
- 大きめの声ではっきり発音する(聞き手が理解しやすくなる)
自信がないと小さな声で早口になりがちですが、自信がない時こそ、大きな声でゆっくり、堂々とプレゼンを行うようにしましょう。
質疑応答の準備をしておく
英語のプレゼンテーションで最も緊張するのが、質疑応答の部分でしょう。
質疑応答では、どんな質問が飛んでくるか分からないため、セリフを用意しておくことができません。
それでも、あらゆる質問を想定して、それに対する答えをぶつぶつ独り言で練習しておくと、少し違う角度の質問にも応用がききます。
また、質問が聞き取れなかった時や、質問の意味が分からなかった時には、以下のようなフレーズが使えます。
もう一度言っていただけますか?
〜という意味でしょうか?
また、どう答えていいか分からなかった時には、以下のようなフレーズが使えます。
良い質問ですね。調べて後ほどお伝えします。
今すぐ正確な答えは分かりませんが、お調べします。
まとめ
この記事では、建築業界における英語のプレゼンテーションで使えるフレーズと成功のコツを紹介しました。
英語のプレゼンテーションは、「導入→本題→まとめ」の3部構成で進めるのが一般的です。
また、本題で伝える内容も、3つ程度にポイントを絞りましょう。
忘れてはいけないのは、プレゼンテーションでもっとも大事なのは、「伝えること」だということです。
そのためには、一貫してシンプルで分かりやすい英語を選びましょう。
さらに、英語力に自信がないと、小さな声で早口で話してしまいがちですが、自信がない時こそ、大きな声ではっきりと発音するようにしましょう。