2024.04.06英語ビジネス

日本と海外のビジネスマナーの違いとは|やってはいけない日本の「常識」

グローバル化が進む今日、海外に進出する日本企業が増え、日本企業に就職した人でも、海外のビジネスパーソンと接する機会も増えてきました。
また、キャリアアップを求め、海外就職を見据える人も増えています。

しかし、グローバルなビジネスシーンに踏み込むうえで立ちはだかるのが「言葉の壁」と「文化の壁」。
特に文化の壁に着目すると、日本での「常識」にとらわれるあまり、外国人ビジネスパーソンに不快な思いをさせてしまい、ビジネスチャンスを逃す可能性も低くありません。

そこでこの記事では、日本と海外でのビジネスシーンにおける違いについて解説し、海外のビジネスシーンで望ましくない行動の例を挙げます。
そして海外のビジネスパーソンと良好な関係を築くにはどうしたらいいか紹介します。

海外進出を控えている日本企業に所属している方・海外就職を考えている方はぜひ参考にしてください。

日本と海外のビジネスシーンにおける違い

日本と海外のビジネスシーンにおける大きな違いは以下の4つです。

  • 直接的な言い回しが好まれる
  • 意思決定のスピードが速い
  • 個人主義が徹底されている
  • 上下関係はあまり重視されない

  • 詳しく見ていきましょう。


    直接的な言い回しが好まれる


    海外のビジネスパーソンからよく聞かれる声として、「日本人の発言は何を意味しているのか分からない」というものがあります。

    日本人は物事を遠回しに伝える傾向があるため、外国人ビジネスパーソンとしては、「発言の裏に何か別の意図があるのではないか」と悩んでしまうことも多いようです。

    また日本人は、「イエス」か「ノー」かを明確に言語化しないことも多いです。そのため、「結局どちらなんだろう」と外国人ビジネスパーソンが頭を悩ませてしまうケースもあるようです。

    例えば、日本人は一人で抱えきれない業務を進めている時も、「大丈夫です」と言いがちですよね。

    日本であれば上司は仕事量と部下の表情から「大丈夫じゃない」可能性をくみ取ってくれるケースもあるでしょう。

    しかし海外のビジネスシーンでは、「大丈夫」というと、「何の問題もない」という意味合いに解釈され、上司はそのまま仕事を任せてしまいます。

    海外のビジネスシーンでは、常に自分の主張をはっきり伝えるよう心がけ、誤解の余地のない発言を心がけましょう。

    意思決定のスピードが速い


    外国人ビジネスパーソンからは、「日本の企業は海外に比べて意思決定が遅い」という意見もよく聞かれます。

    これは、海外の企業がトップダウン式の意思決定方法を採用しているのに対し、日本企業ではボトムアップ式の意思決定が一般的だからです。

    海外の場合、意思決定は上層部よりなされます。部下よりも上司の方がその仕事に詳しいという考え方が一般的だからです。

    そのため、物事を決める際は、すでに決まった内容を上から下に指示するだけなので、意思決定のスピードは速くなります。

    一方、日本の場合は現場の部下から稟議のような形で上へ上へと承認を取る意思決定方法です。
    承認をひとりずつから取る必要があるため、時間がかかってしまうのです。

    ボトムアップ型の意思決定は、ミスが起こりにくく丁寧な方法ではあります。

    ただ、意思決定が遅れると、他の海外企業に発注が回ってしまい、ビジネスシーンで立ち遅れてしまう可能性が多くあります。

    外国人ビジネスパーソンの方とスムーズに業務を進めるには、上司が責任をもちつつ部下に決断の自由を与え、迅速に意思決定していくように心がけましょう。

    個人主義が徹底されている

    日本企業の場合は、個人の発信力より「調整力」や「根回し」、「空気を読む」ことが重要視されていますが、海外でのビジネスシーンでは、個人レベルでの主張や発信力が重視される事が多いです。

    また、日本では、グループ単位での成果や実績が重要視されますが、アメリカでは、個人個人が大きな裁量や責任を担うため、個人単位での貢献や成果が重要視されます。

    そのため、日本では部下がいないうちはリーダーシップを求められることはありませんが、海外のビジネスシーンでは、一社員であっても、成果や結果に責任を持ち、それぞれがリーダーシップを発揮することが求められるのです。

    上下関係はあまり重視されない

    日本では、入社年数によって先輩・後輩といった上下関係が決まることが多いですが、海外にそういった習慣はありません。

    上司と部下は名前で呼び合う場合も多く、あだ名で呼び合うケースも少なくありません。

    特に平等を重んじる欧米文化圏の人には、「上司を敬う」「先輩を敬う」といった日本的な上下関係に違和感を感じる場合が多いようです。

    海外のビジネスパーソンと仕事をする場合は、先方の考え方を尊重して、日本的な上下関係を強要しないようにしましょう。

    海外では通用しない!日本の「常識」

    ここでは、日本で「常識」とされているふるまいでも、海外のビジネスシーンではトラブルを招いてしまいかねないものを5つご紹介します。

    以下の5つの行動は、海外のビジネスシーンではあまり歓迎されないものとなっています。

  • ビジネス上の決断を一旦持ち帰る
  • 契約外の事項への対応を求める
  • 飛び込みで営業をかける
  • ボディ・ランゲージを多用する
  • 酒の席での「無礼講」

  • それぞれ具体的にみていきましょう。

    NG例① ビジネス上の決断を一旦持ち帰る

    日本では、ビジネス上の交渉において、交渉を行う担当者に裁量権がないことも多いですよね。
    しかし、先ほど解説したように、海外では個人個人に責任や決定権があるのが一般的です。

    そのため、日本のビジネスシーンでよくある「一旦持ち帰って上司と検討させていただきます」という発言は、外国人ビジネスパーソンに違和感や不信感を抱かせてしまう可能性があります。

    その結果、競合するほかの発注先に仕事が回ってしまう事態になりかねません。

    交渉の席には必ず決定権のある人物が同席するようにしましょう。

    NG例② 契約外の事項への対応を求める

    日本では、顧客満足度を維持するため、契約外のことを求められても承諾してしまうケースが多々あります。

    一方海外では、契約に含まれていない事項には対応しない、または別料金が発生することが一般的です。

    下請・元請に間に生じる上下関係のようなものも存在しないため、海外の下請業者に契約外の業務を押し付けると、大きなトラブルに発展しかねないので注意しましょう。

    NG例③ 飛び込みで営業をかける

    日本でも、商談の際にアポイントメント(アポ)を取るのが普通ですが、海外では特にアポイントメントが重視されます。

    日本で見かけるいわゆる飛び込み営業や、「近くに来たので顔を出しました」といった訪問は、日本でこそ「やる気のあるビジネスマン」という評価になりますが、海外ではあまり歓迎されないことを覚えておきましょう。

    NG例④ ボディ・ランゲージを多用する


    外国語でコミュニケーションを行う際、ボディランゲージは有効なツールにはなります。
    ただし、ボディランゲージは国によってさまざまな意味合いを持っているため、安易に使うのはおすすめできません。

    例えば、「いいね!」という意味であっても、親指を立てるジェスチャーは、実は南米やアフリカの一部地域、イランなどでは最大のタブーです。

    人差し指と親指で丸を作るのも、フランスやブラジルなどの出身者にとっては強い侮辱を意味するジェスチャーなので、相手を激怒させることになりかねません。

    どうしてもボディランゲージを使いたい場合は、相手の国についてよく調べる必要がありますし、基本的には安易にボディランゲージを使わないのが無難です。

    NG例⑤ 酒の席での「無礼講」

    日本では、お酒の席での出来事は許されるケースも多いですが、海外では、お酒の席であっても、マナー違反や不適切な行為は許されません。

    また、長時間の飲み会を行わない国も多いです。ドイツの飲み会では1杯しかお酒を飲まないケースが多く、飲み会は短時間で終了しますし、お酒の場で仕事の話をするのはそもそも好まれません。

    アメリカでは飲み会を行わないわけではありませんが、夕食を家族でとる文化が根強いため、ビジネスの話はランチの時に済ませるケースが多いです。

    飲み会の文化は国によって違いますし、日本では許される行為が海外では許されないケースもあります。

    相手の国の文化を良く調べ、日本の文化を押し付けないようにしましょう。

    海外のビジネスパーソンと円滑な関係を築くためには

    ここまで、海外のビジネスシーンで「やってはいけない」ふるまいなどを紹介してきました。

    それでは、外国人ビジネスパーソンと良好な関係を築くには、どうしたらよいのでしょうか。

    鍵となるのは、「相互理解」と「フィードバック」です。

    相互理解を心がける

    日本人が海外のビジネスパーソンとコミュニケーションをとる上では、多様な文化を受け入れる心の持ちようが必要になります。

    「国によって文化は違う」という前提に立ち、自分の言動を調整していくことが大切です。

    そしてその一方で、日本人の考え方ややり方を相手に適切に説明し、理解してもらう野も重要です。

    ビジネスシーンにおいては、外国人新入社員へのオリエンテーションやフィードバックを適切に行い、相互理解に努めましょう。

    適切なフィードバックを行う

    日本は学校教育の影響もあり、個人への評価は減点方式になりがちです。そのため、フィードバックでは相手の「ダメな点」を指摘する傾向にあります。

    一方で、欧米などの国と地域では、学校教育段階から、相手の「よい部分」を重視する「ポジティブ・フィードバック」を積極的に採用しています。

    フィードバックを行う際は、まず相手の「よかった行動を指摘」し、次に「その行動がもたらしたよい結果を具体的に指摘」し、最後に、「今後どのような行動をとってほしいのか」を伝えると効果的です。

    相手の望ましい行動には積極的に感謝の言葉を述べたり、褒めたりすることで、働くモチベーションを高めることができます。

    もちろん、相手の望ましくなかった行動や短所について指摘することも必要です。

    きめ細やかなフィードバックを習慣化させることで、外国人ビジネスパーソンを交えた海外のビジネスシーンでも、より円滑にコミュニケーションをとることができます。

    まとめ

    海外のビジネスパーソンと接する上で重要なのは、相手の国と、なによりその人自身を知ることです。
    さらに、日本について適切に説明するスキルも、相互理解のカギとなります。

    日本人をビジネスパートナーに迎えて、日本のことが分からず、日本のことを知りたいと思っているのは外国人ビジネスパーソンも同じです。

    お互いに「分かり合いたい」と思う気持ちが合致すれば、多少の誤解は乗り越えていけるでしょう。

    いろいろと「やってはいけない」行動などを紹介しましたが、決して海外進出・海外就職に憶病にならないでください。

    相手を知り、相手を尊重するスタンスを貫けば、素晴らしいビジネスチャンスや出会いが待っていることでしょう。


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