国内での英語学習をスタートし、徹底した習慣化を経てオーストリア2部・SWブレゲンツへの移籍を果たした荒木大吾選手。連載第3弾は、異国の地で直面したリアルな言語の壁、日本で積み重ねたスピーキングトレーニングの価値、そして32歳での海外挑戦に込めた覚悟に迫ります。
32歳でオーストリアへ|欧州移籍の決断と異文化での現在地
── 改めて、海外クラブへの移籍おめでとうございます! オーストリア(ブレゲンツ)に移籍されて約2ヶ月が経ちましたが、生活や手応え、率直な心境はいかがですか?
荒木: ありがとうございます。まず率直に、異文化の環境に身を置いて、日本語をほとんど見ない生活を送れていること自体が、日本にいたら絶対にできない経験なので「本当に来てよかったな」という思いしかないですね。
ただ、僕がいるブレゲンツはオーストリアの一番西の街で、公用語がドイツ語なんです。街中やスーパーの表記も全部ドイツ語ですし、若い人には英語が通じても年配の方はドイツ語だけだったりして、最初は思っていたほど英語を使う場所ではないなというギャップは少し感じました。でも、そうした環境の違いも含めて、日本じゃできない経験を楽しめています。
── 最初のインタビューで「将来の可能性を広げたい」とおっしゃっていましたが、実際に欧州の地に立ってみて、日本との違いは感じますか?
荒木: こっちにいる方が、精神的にすごく楽ですね。他人の目を気にせず、自分軸で生きている人が多いというか。日本にいた頃よりも「自分の人生を生きている」という実感があります。もちろんサッカーの環境としては、日本のクラブの方が施設も整っていてプロフェッショナルを感じられる部分もあります。こちらはサポーターも熱いけれど規模は小さく、ハングリーじゃないとやっていけないタフさがありますね。

現場での英語コミュニケーションと直面した壁
── チーム内でのコミュニケーションは主に英語ですか?
荒木: そうですね。いろんな国籍の選手がいますが、基本は英語で話します。ただ、練習中はドイツ語、ポルトガル語、日本語まで飛び交っていて本当にカオスです(笑)
── 監督の指示出しやミーティング、ピッチ内での会話はどう対応されていますか?
荒木: 重要な戦術に関しては、サッカーのことなので「なんとなく言っていることがわかる」感覚があります。自分の解釈と大きくズレていることはあまりないですね。英語が堪能なチームメイトや通訳スタッフもいるので、正確に確認したい時は「今なんて言ってた?」と聞いてクリアにしています。
ただ、ピッチ上でプレーが止まった時に、自分の意図を相手へ細かく説明しようとすると、まだまだ全然言葉が出てこない悔しさがあります。
── 以前のインタビューでは「短い文を瞬時に返すこと」や「長い英語の聞き取り」を課題に挙げられていましたが、現地での生活や実戦の中で改善は感じていますか?
荒木: プレー中は考えている暇がないので、文法が間違っていようがとにかく言葉を口から出しています。伝えたい気持ちがあれば、相手も理解しようとしてくれる感覚はありますね。
ただ、プレーが止まった時や普段の会話では、頭の中で「こう言う時はこの文法で組み立てて…」と考えてしまう瞬間がまだ全然あります。言いたいことがスパッと言えなくて、こっちに来てから一瞬心が折れそうになりました(笑)
それに加えて、相手の言っていることが聞き取れない場面もまだまだ多くて。相手の言葉が聞き取れない限り、そもそも自分のスピーキングも始まらないなと痛感しています。言えない悔しさも、聞き取れないもどかしさもあるからこそ、日本にいた時以上に「もっとやらないと追いつけない」という焦りやモチベーションが湧いていますね。
日本での学習習慣が「現場の武器」になるまで
── 日本にいた期間、Gabbyのアプリを使った毎日の反復トレーニングや、外国人コーチとの週1回のライブセッションに取り組まれていました。現地に来てみて、その土台はどう活きていますか?
荒木: ネイティブの専任コーチと定期的に話す環境を日本で作っていたおかげで、外国人と対面して英語を話す時の緊張感は完全になくなりました。あと、やっぱり「自分が口に出して言えるものは聞こえやすい」というのは現地でも感じますね。ただ、実戦で咄嗟に使いこなすには、当時の学習量では全然足りなかったなとも痛感しています。
── 実際に現地の環境に飛び込んだからこそ、日々の英語学習について改めて気づいたことはありますか?
荒木: 正直、日本にいた時はただ出てくる文を追うだけになってしまって、受動的になっていた部分があったなと反省しています。画面の文章をただ読んで声に出しているだけでは、実際の現場では全く自分のものにならないんですよね。「自分で頭を使って考えて、口から音を出す」ところまで落とし込まないと意味がないんだなと、現地に来てから身にしみてわかりました。だからこそ今は、自分で選んだ教材を使って、音声を流しながら口で言えるようになるまで絶対に次のページに進まない、という反復を愚直にやり直しています。
自己主張の文化と、ピッチで引かないメンタル
── 海外の選手は自己主張が激しいイメージがありますが、文化の違いによる壁は感じましたか?
荒木: そこは全く問題なかったです。もともと僕自身が思ったことをストレートに言う性格というのもありますし、こっちの選手は全員が主張してくるので「負けてられないな」と。むしろ「間違っていてもいいから言いたいことを主張する」「ファイティングポーズを取り続ける」姿勢がここでは当たり前です。
──ピッチでプレーする中で、コミュニケーションの面で悔しい思いをすることはありましたか?
荒木: 最初は若干見下すような態度を取る選手もいましたよ。でもサッカーはシンプルで、プレーで見せれば相手は何も言えなくなります。言葉が完璧じゃなくても、気持ちで引かないこと。「何を言ってるんだ」という顔をされたら、余計に言葉を返してやります(笑)日本の選手特有の真面目さやリスペクトを持ちつつも、引かずに自己主張するマインドはすごく大切だと実感しています。
英語力を武器に広がるキャリア|現役の先に見据える指導者への道
── 英語を身につけることで、今後のキャリアにどんな広がりを感じていますか?
荒木: もともと「現役を引退した後の人生でも必要になる」と思って英語学習を始めました。将来的には、指導者として挑戦することも視野に入れています。
そのためには、サッカーの戦術や自分の考えを言葉で正確に伝える英語力が不可欠です。選手を引退した後もヨーロッパに残って勝負できるだけの英語力を身につけたいですし、そうすれば将来日本に戻った時にも、代えの利かない必要とされる人間になれると思っています。
挑戦を迷っている人、そしてサポーターへ
── 荒木選手と同じように、30代を迎えて新しい挑戦や海外への一歩を迷っている方へ、メッセージをいただけますか?
荒木: それぞれの置かれている状況があるとは思います。でも、もし「行きたいけれどどうしよう」と迷っているくらいなら、絶対に行った方がいいです。
僕自身、日本での安定や条件を手放して、32歳という年齢でヨーロッパに来ました。でも、そんなことよりも「得られる経験」や「人生の豊かさ」の方がはるかに大きい。もちろん事前の学習や準備はできる限り日本でやっておいた方がいいですが、最後は飛び込んでしまえば、人間なんとでもなります。
── 最後に、日本から応援してくれているファンやサポーターの皆さんへ一言お願いします!
荒木: 年齢を重ねてからのヨーロッパ挑戦なので、「もっと早く来るべきだった」と思う瞬間もありますが、今こうしてサッカーも生活もすごく充実した中でやれています。今後もずっとサッカー界に関わり続けていけるように、プレーはもちろん、言葉もしっかり学んで自分の身につけていきたいです。これからも応援よろしくお願いします!
インタビュアーより
英語学習のスタート(第1部)、継続の苦悩と習慣化(第2部)を経て、32歳でヨーロッパ移籍という大きな挑戦を果たした荒木選手。現地に来てから学習量の不足を痛感したことや、「一瞬心が折れそうになった」という本音を飾らずに語る姿に、挑戦者としての覚悟を感じました。日本で培った物怖じしない度胸を武器に、異国の地で引かずに戦い続ける荒木選手の挑戦を、これからも全力で応援していきます。
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